当記念館は戦没学生らの遺稿集「きけわだつみのこえ」に収録された日記や手紙などを展示する記念館である。東大赤門近くの古いマンションのメゾネット区画を改装し展示室(2階)と事務室(1階)とした。敷地周囲は古い本郷の雰囲気を残す静かな場所である。貴重な遺稿と対面し、遺稿集を受け継いで行く、そういう精神性を持った場所には、どのようなが空間がふさわしいか? 私は「伝統的なもの」と「現代的なもの」とを合わせ持つ「和洋折衷空間」がふさわしいと考えた。すなわち直射光を制御する障子は「和」であり。わだつみの意味する海を表す濃紺のカーペットは「洋」。遺影を掲げた桐の木が張られた壁は「和」と通じるならば、展示ケースに使われている欧州産の合板は「洋」である。それらの材料の組み合わせにより、静かで落ち着いた空間となり、その場所にふさわしい空間となった。 |