北アルプスや乗鞍高原などの美しい山々を望める敷地は、新興の住宅地ながら地区のデザインコードによって整えられた街並みのなかにある。
そこに、終の住処として静かで落ち着ける家を計画することがテーマである。解決策として、四角い敷地にあえてL型の建物を配することで小さいながらも少し囲われた庭を設ける計画をご提案した。直接隣家に部屋を向けるのではなく、庭に面して部屋を展開することで自ずとプライバシーレベルも高まるからである。一階の和室と土間は音楽室とでL型配置となり庭を囲み、二階では素晴らしい眺望を楽しめる居間や書斎、サンルームを設け、主寝室とともに同じく庭を囲む。依頼主は年配のご夫妻であり、落ち着いた和洋折衷の内外のイメージがご希望である。よって内外の仕上げ材は和洋につながる自然素材により構成した。それらは、塗り壁、三和土の洗い出し、大谷石張、和紙壁紙などである。加えて土地産の木材を主要構造部と、外壁板張(カラマツ)や床板などの仕上げ材にも多数採用した。さらに、木の竪格子を内外に配した。竪格子は空間の仕切りや目線を避ける意味だけでなく、空間のプライバシーレベルの移行部分に設けている。そういう精緻に組み上げられた竪格子などは、地元の大工、その他職人らの創意工夫に基づいた質の高い手仕事によるものである。
第31回松本市景観賞奨励賞「街をつなぐ家/L-House」 |